「タワマン節税にメス」について国税OB税理士が解説。【後編】

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。

「政府・与党は、タワーマンションの相続税評価額を引き上げる検討を始めた」との報道に関連して、先日の「タワマン節税とは」に続き、後編の今回は「行き過ぎたタワマン節税を国税がどのように制したか」についてお送りします。

(前編はこちら

税務署の更正処分から裁判での争いへ

金持さんの相続税申告から3年後、税務署から更正処分が行われました。

調査官

今回のタワマンの評価を路線価に基づいて2億円と評価してますが、こちらの鑑定評価額に基づいて9億円で更正します。

税理士

財産評価通達に定める路線価で評価してるんだからいいでしょ?

調査官

今回のタワマン購入は相続税を免れるだけの行為ですよね?買って、すぐ相続が発生して、すぐ売って。このタワマン取引がなければ相続税2億円のところ、納税額0って。

銀行も調査しましたけど、融資稟議書に「相続税対策のため」って書いてありましたよ。

よって、路線価で評価することが著しく不適当と判断し、評価通達総則6項を適用してこちらで採用した鑑定評価額で更正します!

税理士

タワマン節税なんてみんなやってるでしょ。本件事案だけ評価通達で定める路線価を使わないで鑑定評価額とするのは租税の平等原則に反しますよね?納得いかないので裁判で争います。

 裁判は最高裁まで行き、判決がでます。

裁判長

租税の公平を害する特別な事情がある場合は路線価以外の評価額を使うことが許される。

今回は、相続税を免れることのみを期待して、あえて銀行借入とタワマンを購入を企画実行し、結果として相続税を免れているのだから、特別な事情があるといえる。

よって国税の処分は適法である。

まとめ

相続税を免れるための行き過ぎた行為は、総則6項が適用されて否認されるリスクが大きいということ。

今回は、金持さんが90歳という高齢になってから相続対策を実行したこと(=タワマン購入から短期間での相続発生となった)や相続した息子さんがすぐに売却してしまったことなどが、対策感を際立たせてしまいました。教訓になります。

一方、判決ではタワマンの評価額が時価より著しく低くなったことのみでは、国税側が総則6項を用いて鑑定評価額を用いる「特別な事情」があるとはされませんでした。

よって、今回の報道のとおり、税制改正等でタワマンのそもそもの路線価を引き上げる必要性があるということですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です