国税庁が発表した昨年度の法人税の調査状況について国税OB税理士が解説

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。

先日の所得税に続き、国税庁が「令和3事務年度法人税等の調査事績の概要」を発表しました。

(所得税の調査事績についての記事はこちら

調査件数は前年よりも増加するも依然として低水準

法人税の実地調査件数は4万1千件と前年度2万5千件より6割も増えましたが、コロナ禍前の平成30年度には9万9千件であったことを考えると依然として低水準です。

これは所得税と基本的には同じですね。

件数が少なくなったためにより深堀した調査が行われ、結果として調査1件あたりの追徴税額が2~3倍に増加しているのも同じ傾向です。

ちなみに、法人税の申告件数は294万件ですので、昨年度は全法人の1.4%の法人しか調査を受けていないということ。

実際に調査を受けた法人は、あまたの法人の中から「あらゆる資料情報と提出された申告書等の分析・検討を行った結果、調査必要度の高い法人として判断」されたということです。

簡易な接触による自発的な申告内容の見直し要請が増えているらしい

簡易な接触とは、税務署からの書面照会や電話連絡、来署依頼によるもので、昨年度は6万7千件実施されました。

コロナ禍前には件数の発表がなかったのですが、実地調査が激減し、このような数値が新たに発表されているということは増加しているということなのでしょう。

この簡易な接触を受けた場合には、自主的な修正申告をすれば加算税はかからないので、迅速に対応することが重要です。もたもたしていて税務署から「調査」と言われてしまったら加算税は免れませんので。

この簡易な接触も含めると、法人に対する税務署の5年間での接触率は18.5%になるようです。実地調査が少なくても税務署はきちんとすべての申告内容を見ており、税務コンプライアンスの維持向上をきちんと図っているとしています。

主要な取り組み事項

主要な取り組み事項としては、コロナ禍前と変わらず、海外取引・無申告・消費税の3本柱です。

が、順番に変動があり、以前は①海外②無申告③消費税だったのが、①消費税②海外③無申告となりました。

「消費税きちんと見てます。不正は許しません。だからインボイスとか増税とかいろいろ受け入れてくださいね」ということですね。

不正発見割合が高い業種

不正発見割合の高い業種のトップ3は「その他の道路貨物運送」、「医療保健」、「職別土木建築工事」でした。

1、2位は3年前以前はトップ10にも入っていませんでした。反対に、常時1、2位に君臨していた「バー・クラブ」、「飲食業」がトップ10から消えるなど、コロナ禍を反映しているという感じです。

不正発見割合が高いといっても3割程度。全業種では2割程度。昔に比べるとだいぶ低くなったなあという印象ですが、これは税務コンプライアンスの向上の証なのか、国税組織の調査能力の低下の証なのか。前者ですね、多分。

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