節税策のつもりが思わぬ損に?「合計所得金額」を参照する所得制限に注意。

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。
確定申告は2月16日からですが、還付申告についてはもう提出した人も多いのでは。
ところで、株式売買の損失が出た場合にはその損失を3年間繰り越し、その後に生じた利益と相殺することができるというしくみは、法律上認められている有効な節税策ですが、場合によっては節税のつもりが思わぬ損につながる可能性があります。
さまざまな所得制限の参照元となる合計所得金額とは
例えば所得税の確定申告において、配偶者控除を受けるためにはその配偶者の年間所得金額が48万円(給与収入103万円)以下でなくてはいけません。
このように一定の控除をうける際に所得制限があるものは多いのです。
・配偶者控除(本人)・・・1000万円
・ひとり親控除・・・500万円
・住宅ローン控除・・・2000万円
・基礎控除・・・2500万円
これらの税法上の控除の他にも、
・児童手当(扶養配偶者1人、児童2人)・・・736万円
・社会保険の扶養・・・130万円(明確な規定はなし)
などがあります。
これらの所得制限が参照するのは「合計所得金額」といい、株式売却益や配当収入が含まれます。
といっても、通常、上場企業の株式売却などは特定口座での源泉徴収で課税が終わり、申告不要の源泉分離課税という方式ですので、この合計所得金額に含まれることはありません。
問題は、前述したように損失の繰越控除を受けようとして確定申告する場合です。
この場合、繰越損失によって所得金額が0になったとしても、合計所得金額にはその損失控除前の金額が含まれるということです。
具体例
サラリーマンA、配偶者Bと児童2人の4人家族
・Aは給与所得720万円で、R4年において株取引が好調であり年間50万円の利益を得た(源泉徴収10万円)が、その前年に50万円の損失があることから、今年は確定申告で源泉徴収された税金の還付を受けようと考えている。
・Bは給与所得85万円でAの配偶者特別控除の対象となっている。R4年において株取引が好調であり年間50万円の利益を得た(源泉徴収10万円)が、その前年に50万円の損失があることから、今年は確定申告で源泉徴収された税金の還付を受けようと考えている。
Aさんは、株式の譲渡所得50万円を申告することで繰越損失50万円を使って10万円の還付を受けることができます。一方で、合計所得金額は720+50(繰越損失控除前)=770万円となり、児童手当の所得制限にかかることから児童手当の受給額が12万円ほど減ってしまうことに。
Bさんは、株式の譲渡所得50万円を申告することで繰越損失50万円を使って10万円の還付を受けることができます。一方で合計所得金額は135万円となり、Aさんは配偶者特別控除を受けることができなくなるので、Aさんの税額が12万円ほど増えてしまうことに。また、社会保険の扶養認定から外れる可能性も。
まとめ
繰越損失控除の制度は、所得を数年間でならして担税力をみるしくみ。対して所得制限を判定する場合はあくまで単年度の所得をみるということですね。
節税のはずの繰越控除で損をしてしまうのは避けたいところ。
株式の繰越損失控除による還付申告を行う際には、各所得制限の金額に十分お気をつけください。
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