事前確定届出給与って何?について税理士が解説

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。

確定申告真っただ中ですが、本日は久しぶりに法人税関連ネタを。

法人税の中でも大きな論点となる役員報酬、そのうちの事前確定届出給与にスポットを当ててみます。

事前確定届出給与とは

法人の社長をはじめとした役員に支給する役員報酬は、毎月一定額でないと損金の額に算入されません。

この規定がないと法人の役員が利益を見ながら報酬を増減させることで、容易に法人税の利益調整が可能になってしまうので当然です。

しかしながら、定期同額給与以外に一定の時期に一定額の報酬を支給する旨を事前に税務署に届け出ることで損金算入が可能となる例外規定があります。

それが事前確定届出給与の届出といわれるもの。

事前確定届出給与が利用される場面

①「社長だって従業員が賞与をもらう時期に一定のまとまった金額が欲しい!」

 一番よく利用されます。

 年間1200万円の役員報酬を月額100万円とするのではなく、月額80万円+賞与120万円を年2回といった形です。

 この賞与部分に事前確定届出を適用することで損金算入を可能とします。

 このような慣習がある会社は多いのでこれを実現させるための規定とさえいえますね。

②「社会保険料が高いのでなんとかしたい!」

 賞与の社会保険料計算の上限額を利用して社会保険料の最小化を狙うスキームがあります。例えば年間報酬2500万円の報酬を月額10万円、賞与2380万円とするような極端なもの。(賞与の場合、健康保険は573万円、年金は150万円という支給上限額を超える部分にはかからない)

 法人税法上は届出どおり支給していれば損金算入されますが、厚生労働省もこのような保険料逃れを問題視する内容の通達を出しており、おすすめはしません。

③「多少利益調整など」

 定期同額の月額報酬の他に、一定額を期末月に支給するという届出をしておけば、事業年度全体で法人の利益が出たときには届出どおり支給し、利益が出なかった場合には支給しないことで、実質的に利益調整が可能になります。

事前確定届出給与を届出どおりに支給しないこととした場合の留意点

事前確定届出給与については、届出のとおりの時期にその金額を支給しないと支給額の全額が損金不算入となります。

また、当初届け出た事前確定給与を「支給しない」とした場合には、損金不算入による影響はありませんが、支給日までに本人から受給辞退の申し出を受け、臨時取締役会等で支給しない旨を決議しておかないと、源泉所得税や受贈益の問題が出て来る可能性があります

コロナ禍での資金繰り悪化などにより予定どおりの支給ができないこともあると思われます。そのような場合には届出額の変更が認められる可能性もありますが、その要件はとても厳しいので、当初の予定どおりに支給できなくなる場合には上記の手順を踏むと安全です。

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