満期返戻金ありの生命保険の契約者を、保険料を負担していない者に変更した場合に贈与税はかかるのかという話

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。
これまでは自分の子どもを被保険者として生命保険契約の保険料を支払ってきたけれど、子どもが成人して生活基盤も安定したことから、契約者を子どもに変更して、以降は保険料も子どもに払ってもらおうと考えるようなことは良くあります。
この時、例えば、契約者変更時点で満期返戻金を受け取る権利が300万円だったとしたら、契約変更時点でこの300万円に贈与税はかかるのか?
答えは、贈与税はかかりません。
相続税法上は、保険を解約したり契約者が死亡したりといった保険事故が起こって初めて、契約者に財産的価値が移転したものと考えます。
よって、契約者(=保険料支払者)を変更しただけでは課税は発生せず、契約者変更後、その子が保険契約を解約して満期返戻金を受け取った時点で初めて、実際に財産的価値が移転したものとして贈与税がかかることになります。
(出所:国税庁HP)
その他満期返戻金に関する課税の具体例

Ⅰ 親が保険契約者として保険料200を支払っていた(この時点での満期返戻金は160)が、子に契約者変更をした。
→課税なし(子が解約した場合には親から子へ満期返戻金160の贈与があったとして贈与税の対象となる)
Ⅱ 子が新保険契約者としてさらに保険料200を支払った(この時点での満期返戻金は400)ところ、親が亡くなった。
→ 親から、満期返戻金を受け取る権利200(この時点の解約返戻金400×親が支払った保険料200/保険料支払総額400)の相続があったとして相続税の対象(相続財産)になる。
Ⅲ 子が保険契約者としてさらに保険料200を支払った(この時点での満期返戻金は700)が、現金が必要になったので解約することにした。
→ 満期返戻金-払込保険料総額が一時所得として所得税の対象になる。
まとめ
以上のように、生命保険契約については、契約者(保険料支払者)、受取人、名義変更の時期などの条件次第で課税関係が大きく変わります。
来年以降は贈与税や相続税の新制度が動き始めることもあり、より長期的な観点での対策が重要となってきますねという話でした。