インボイス制度によって影響を受ける個人事業主の法人成り(法人化)や事業承継について

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。
消費税法には、小規模事業者の事務負担軽減等の理由から、一定の事業者には消費税を納める義務を免除する事業者免税点制度というものがあります。
具体的には、基準期間(2年前)の課税売上が1000万円以下の事業者や、そもそも基準期間がない新設法人や新規開業個人事業主の開業後2年間は、基本的には消費税の納税義務がありません。
よって、個人事業主が法人化するような場合とか、個人事業主が後継者にその事業を引き継ぐような場合は、新設法人や後継事業主の事業開始1~2年目は、消費税を納める義務がなくなり、その税負担軽減効果は百万円単位になることも。
しかし、インボイスが導入されることで、これらの恩恵を受けることができなくなる?
インボイスにより免税事業者でいられない
その理由は、免税事業者では取引先にインボイスを発行することができないから。
せっかく法律で消費税を納めなくてもいいですよという2年間についても、インボイスを発行するためには、課税事業者として消費税を納めなくてはなりません。
インボイスを発行する必要がない小売業などのケースは問題ありませんが、多くのケースではこれまでのような消費税免税の特典を享受することは難しくなるでしょう。
まだまだ2割特例がある
そこで、インボイスの負担軽減措置のひとつである2割特例があります。
インボイス制度開始に伴って、免税事業者が課税事業者を選択した場合、売上税額の2割を納税額とすることができるもので、売上1000万円以下の小規模事業者だけでなく、上記のような、新規事業開始のために基準期間がないため免税事業者となる場合も該当することになっています。(注)令和5年6月20日時点の情報に基づくもの。
この特例を使えば、一部ですが、まだ消費税の節税をすることができます。
課税売上3000万円、消費税納税額150万円(簡易課税)の対事業者向けサービス業の事業承継の場合
先代が廃業して、後継が新規事業として開業。
インボイス登録事業者になり、消費税の納税義務が発生するが、1~2年目は2割特例によって消費税額が60万円となり、事業承継後2年間で180万円の消費税節税となった。
※3年目は、特例対象期間ではあるが、基準期間の課税売上が1000万円を超えておりそもそも免税事業者ではないので本特例の適用はできない。
この2割特例は、令和8年9月30日までの3年間限定です。
業種によっては、軽減される税額はかなりの額になるので、事業承継や新たに事業を立ち上げようと考えている人にとってはかけこみの要素になりそうです。