税務調査を拒否したらどうなる?

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。
税務調査は任意調査と言われています。
では、「税務調査は任意なので協力しない」と言い続けて帳簿書類の提示を拒むなど、調査を拒否することはできるのでしょうか?
結論を言えば、拒否することはできません。
税務調査の任意性
税務調査の根拠と罰則については、国税通則法に規定があります。
国税通則法(抜粋)
第七十四条の二 国税庁等の職員は、・・・調査について必要があるときは、・・・者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件の提示若しくは提出を求めることができる。
第百二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
二 ・・・当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検 査の実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
このように、税務調査は、法律でその必要性が認められており、応じない場合には罰則規定も用意されています。
査察のような強制調査とは違いますが、罰則規定による受忍義務があることから、純粋な任意調査ではなく、間接強制調査と言われています。
では、実際に税務調査において、帳簿書類の提出を拒むなどの非協力行為を繰り返していると、このような罰則が飛んでくるかと言えばそうでもありません。
税務署は調査非協力行為に対してはもっと単純で効果的なダメージを与える方法を採ります。
帳簿書類の提出拒否への税務署の対応① 青色申告取消
まずは、青色申告を取り消されます。
青色申告は承認制で、その承認要件のひとつに帳簿書類の備付けがあり、これは、単に物理的な備付けだけではなく、これを税務職員に提示することを含むと解されています。
よって、再三再四の税務職員の要請にも関わらず、帳簿書類の提示に応じないような行為に対しては、青色申告を取り消されることになります。
さまざまな特典が失われるだけでなく、税務署から容赦のない更正処分を受けることにもつながっていきます(推計課税など)。
帳簿書類の提出拒否への税務署の対応② 消費税の仕入税額控除否認
さらに、金銭的に大ダメージなのが消費税の仕入税額控除の否認です。
例えば、売上3.3億円の法人で、売上消費税3千万円から仕入れにかかった消費税2千万円を控除して差引1千万円の消費税を納税していた場合。
この仕入れにかかった消費税を控除するためには、仕入にかかる帳簿及び請求書の保存が必要です。
そして、この保存についても、単に物理的な保存だけではなく、これを税務職員に提示することを含むと解されます。
よって、再三再四の税務職員の要請にも関わらず、帳簿及び請求書の提示に応じない場合には、消費税の仕入税額控除を否認され、上記例の法人の場合には、2千万円もの消費税の追徴課税が発生することに。
5年遡るので追徴税額は1億円に!
ちなみに、税務署から更正処分を受けた後になって、帳簿や請求書を提示してもそれが認められることはありません。
まとめ
税務調査が任意調査だとたかをくくっているととんでもないことになります。
税務署から税務調査の連絡が来たら、信頼できる税理士にすべてお任せして、できる範囲で協力して早期に調査終了してもらうのが一番です。
業務多忙な時期などの正当な理由があれば、日程調整などは柔軟に対応してくれますし、帳簿書類を紛失してしまったような場合でも、それだけを以て上記のような厳しい処分が下されることもありません。
ちなみに、査察が令状をもって踏み込んできたら…
身に覚えもあることでしょうから諦めましょう。
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