少額特例資産の取得を節税に用いる場合の注意点

こんにちは、長野県須坂市の植木税務会計事務所です。
事業者が固定資産を取得した場合には、原則として、一時の費用とするのではなく、耐用年数に応じて複数年にわたって費用計上することになります。
しかしながら、税法では、事業者の事務負担の軽減等を目的として、10万円未満の少額資産は一時の費用にできたり、20万円未満であれば3年間均等償却ができたりと、早期に費用化できる特例が用意されています。
さらに、青色申告の中小企業者等に対しては、30万円未満の資産(少額特例資産)についても、一定の要件の下で一時の費用とすることが可能です。
例えば、年度末に利益が見込まれる場合、従業員のパソコンの更新などをこのタイミングで行えば、1台20万円×20人とすれば400万円分の利益を圧縮することが可能になります。
ネットで検索すると、「少額特例資産を期末に取得して節税を」みたいな記事が多数ヒットし、それぞれ、制度の概要(対象者、対象資産、金額など)説明しているのですが、そのほとんどについて書かれていない注意点についての解説です。
取得した時点で一括費用計上ではなく、事業供用した時点で費用となる
これは少額特例資産に限らず、10万円未満の少額減価償却資産についても同じなのですが、「資産を購入した」年度ではなく、「事業の用に供用した」年度です。
事業の用に供用とは、「本来の目的のために実際に使用するに至った日」とされており、例えば、アパート経営を営む不動産事業者などが、利益調整のために、将来的にそのアパートの修繕で使うであろう給湯器などを年度末にまとめ買いしても、それは年度末時点では未使用=事業の用に供していないため、税務上の費用としては認められません。
なお、ヘルメットなどの防災用品などは、実際に使用していなくても、備蓄することが事業供用として認められます。
【過去記事】災害時における非常用食料品等を購入して備蓄した場合の税務処理について
厳密には節税ではなく利益の繰り延べ。キャッシュフローの悪化にも要注意。
少額特例資産を取得して利益を圧縮しても、将来の費用を先取りしたにすぎず、厳密には節税にはなりません。
「今期だけ業績がよくて利益が突出してしまい、(累進税率等により)税負担が大きくなるから利益を平準化したい」ような場合の利益調整としては有効ですが、毎期同じくらいの利益を出しているような場合はあまり節税にはならないということです。
また、キャッシュフローの面では悪化する要因ともなります。
当面の税金のキャッシュアウトを抑えることが可能になっても、それ以上に資産の取得のためにキャッシュが流出してしまうからです。
まとめ
期末になって利益が出そうだから「とりあえずなんでもいいから30万円未満の資産を買って節税しよう」はあまり良い選択肢にはなりません。
期末に駆け込みで資産を購入する場合には、
本当に節税になるか、年度内に事業供用できるか、事業活動に真に必要な投資か、キャッシュフローに問題はないか、
などから総合的に判断しましょう。