相続税の調査選定にもAIが活躍するらしい

報道によると、国税庁は、今年の夏頃から相続税の調査先の選定にAIを活用していくらしい。

これまでも、所得税や法人税の調査選定には、先行的に採用されているのが、相続税にもというところでしょうか。

AIと調査選定の相性は?

国税庁にはKSKいう納税者の申告データや調査事績を管理するシステムがもう数十年も運用されており、かなりのデータが蓄積されています。

(文系の私は単純なので)AIは、大量の過去のデータを学習して、そこから傾向分析を行って、将来の最適な解を導き出していくものと理解していますので、国税関係の調査選定とは相性抜群だと思っています。

例えば、法人税の調査選定においては、

  • 同規模同業種法人の申告事績(業種の景気動向)と調査事績(不正形態)
  • 過去の調査事績
  • 申告書内訳書の内容(利益率、役員報酬の状況、代表者借入金の増減、未払金と仕掛などなど)
  • 法定調書やタレコミ資料など

まだまだ無数の項目があるのでしょうが、保有するビックデータを利用して、項目ごとに配点し、その総合点で調査優先度の順位付けをするなどにAIが活用されていると思います。

これまでは、調査先の選定は、選定担当者の調査経験やセンスに頼った、ある意味「職人芸」であり、選定担当者によって調査事績に大きな変動があるところ、このようなAI選定によれば、誰でも、1年目の新米調査官でも、不正発見可能性の高い法人に調査を実施することができるわけです。

まだ、このようなAI選定が導入され始めたころには、ベテラン統括官の中には、そんなAI(ごとき)が上辺の数字ではじき出した選定より、自分の経験の方が上だとして、独自の選定を行っている場面が多かったと記憶していますが、実際に結果を集計してみると、AI選定の方が良好な結果を出していた(多額の追徴課税や不正発見があった)らしいので、やはり調査といった職人芸の分野においても、AIが幅を利かせてくるのが自然の流れなのかと寂しくもあり、頼もしくもあり。

相続税の分野ではどうなのか

相続税においては、被相続人の財産は現預金だけでなく、過去の法人税や所得税の申告実績も密接に関連してくることが少なくありません。AIの有効性は非常に高いと考えられます。

報道によれば、2023年の相続税の申告をAIが分析して選定を行い、その後実際に調査が始まるようです。

相続税の調査で最も問題となるのは現預金の過少申告ですが、これまでのように、個人の分析では限界のあったところを、ビックデータを活用したAI分析で、被相続人の現預金を含めた財産の流れは数十年単位で明らかにされてしまうかもしれません。

近い将来、相続税の更正の理由欄に、「AIの分析によると、被相続人の現預金相続開始時点で〇億円と推定される・・」などと、AIの分析結果が正式な証拠として採用されることさえあるかも・・・

※ちなみに、いつもはイラストやさんのイラストを使っているのですが、今回はマイクロソフトの生成AIであるcopilotさんに、「データを分析するAI」というお題でイラストを作成してもらいました。

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