外国人留学生をアルバイトで雇った場合の源泉徴収について

こんにちは、長野県須坂市の植木税務会計事務所です。

最近では、コンビニや飲食店で外国人の方がアルバイトをしていることがめずらしくなくなりました。

日本人の大学生がアルバイトをするのと同じように、海外からの外国人留学生がアルバイトをすることも多くある中、アルバイトを雇う側からするとアルバイト代の源泉徴収はどうすればよいのかという問題に悩むことも。

今回はこの外国人留学生についての源泉徴収問題を解説します。

原則:居住者か非居住者か

まず、原則的には、その外国人留学生が居住者か非居住者かで扱いが変わります。

居住者と非居住者

我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。

したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。

                                         (出所:国税庁HP)

単なる国籍等の有無でなく、日本に生活の根拠をおいて一定期間にわたって日本国内に居住している者を居住者としています。

よって、日本人であっても、海外赴任などで1年以上日本を離れることになれば、1年以上日本に居所を有することにならなくなることから、非居住者となり、反対に外国人であっても、留学などで日本に1年以上居住する者は居住者となるわけです。

ということで、外国人留学生についても居住者となることが多いはず。

居住者であれば、日本人の大学生を雇っている場合と同じ扱いになるので、源泉徴収額表などに当てはめて源泉徴収を行うことになります。

例外:二国間の租税条約、租税協定の存在

と、ここまでは原則的な取扱いですが、税法には例外も多くあり、今回の外国人留学生に対する源泉徴収問題においても例外があります。

今回の例外は租税条約という存在です。

租税条約は、相手国との経済活動を活発にするために、相互主義に基づいて決められた二国間の税金に関する取り決めです。そのいろいろな取り決めの中に、それぞれの国民が相手国に留学した場合、その留学生のアルバイト代に所得税を課すかどうかも含まれているのです。

条約は国内法(ここでは所得税法)に優先しますので、条約で「留学生のアルバイト代に所得税は課さない」と決めていれば、上記の所得税法の原則は適用されないことになり、同額のバイト代であっても、日本人学生からは源泉徴収を行わなければならず、外国人留学生からは源泉徴収を行わないということになるわけです

しかしながら、条約は相手国との交渉で決まったものなので、相手国によってまちまちの内容になります。

主なところでいうと、

・所得税を課さない・・・中国、韓国、フィリピン(韓国と比は上限等あり)など

・所得税を課す・・・インド、ベトナム、マレーシアなど

よって、外国人留学生を雇う場合にはその出身国との租税条約を確認する必要があります。

また、租税条約に基づいて源泉徴収の段階で所得税を課さない場合には、雇い主経由で事前に所轄税務署長に「租税条約に関する届出書」を提出する必要もあります。

最後に

同じ立場のアルバイトでも片方は源泉徴収が必要で、片方は不要とはなんだか不公平な感じもしますが、上述のとおり、租税条約の目的がそれぞれの二国間の経済活動の活発化にあるので、二国間での平等な取扱いが優先になります。

中国からの留学生のバイト代に所得税が課せられないのは、日本から中国に留学している学生が、中国でのバイト代には所得税が課せられていないからなのです。

それぞれのお国の事情によって取り扱いが異なることはややこしいですが、外国人留学生を雇う際には租税条約を確認するなどして誤りのない処理を行うようにしましょう。

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