節税についての話⑥ 法人における短期前払費用の活用と注意点について

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。
法人においては、決算近くになって利益が出そうな場合の節税策として短期前払費用というものがよく用いられます。
1回限りの利益繰り延べの節税策ですが、手間もリスクもなく、急に利益が出てしまった事業年度においてはよく使われる節税手法です。
前払費用とは
そもそも会計上前払費用とは、「法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するもの」をいいます。
例えば、毎月の事務所の家賃20万円を支払うような契約で、10月決算法人が10月中に翌期11月以降分を前払いしたような場合です。
10月中にはまだ役務の提供を受けていないので、支出した時には前払費用として資産計上し、翌期11月以降になり、実際に役務の提供を受けた時に損金計上されます。
短期前払費用の取り扱い
法人税法においては、短期前払費用の取り扱いがあり、法人が、前払費用の額で、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、上記の「前払費用」にかかわらず、その支払時点で損金の額に算入することが認められます(法人税法基本通達2-2-14)。
つまり、上記の例でいえば、10月31日に翌期1年間分の家賃240万円を前払いすると、その全額が当期中の損金として認められることになります。
「一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるための支出」なので、家賃の他にもソフトウェア使用料、コンサルタント費用、保守料などなど幅広く対象になります。
短期前払費用の注意点
使い勝手の良い短期前払費用ですが注意点もあります。
ひとつは、「継続して」なので、今期年前払で支払ったものを、来期は月払いなどとその時に応じて変えることは認められません。
あと、これは実際に税務調査でもよく指摘される事例ですが、短期「前払費用」の取り扱いなので、未払費用ではだめです。
年度末に翌期1年間分の家賃を損金計上するので同じような気がしてしまいがちですが、
(借方)地代家賃240万円 (貸方)未払費用240万円
では損金としては認められませんのでお気をつけください。