雑所得300万円問題

こんにちは、植木税務会計事務所 税理士の植木です。
国税庁が副業収入の申告上の取り扱いを明示したということで大きな反響をよんでいます。
ものすごく簡単に言えば、サラリーマンの副業収入は事業から生じた事業所得として申告するのか、その他の雑所得として申告するのか、これまでわかりにくかったところに、一定の判断基準を示したということです。
事業所得と雑所得
事業所得とは
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
雑所得とは
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
例えば同じく原稿執筆して原稿料の収入があったとしても、それを事業として営んでいるなら事業所得、そうでないなら雑所得ということです。
この2つの所得区分、税率等は一緒ですが、事業所得には雑所得にはない多くのメリットがあるのです。
事業所得のメリット
- 特別控除など、様々な特典がある青色申告を適用できる。
- 赤字を給与所得と相殺して税金の還付を受けることができる(損益通算)。

事業として営んでればいいんだから、とりあえず税務署に「開業届」を提出してと。副業はいろんな経費を計上して赤字にできるから、これを給与所得と相殺して給与にかかった税金の還付を受けよう。

開業届を出せばいいってもんじゃないんです。事業かどうかについては、営利性や継続・反復性、その事業に費やした労力の程度などなど総合的にみて、その事業が社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する必要があります。
これまで、「事業として」という点がわかりにくく、明確な判断基準がなかったことから、副業収入を得るサラリーマンがその副業を雑所得として申告して節税を行うという手法が散見されていました。
もちろん、税務署によって否認されたり、裁判等で争われることもありましたが、明確な基準がない中で、税務署側も副業を事業だと言い張る納税者に対して、事業ではないことを認定するためには相当な労力がかかるため、事実上黙認状態にあったといっても過言ではありません。
しかしながら、働き方改革やシェアリングエコノミーが進み、今後ますますサラリーマンの副業収入が多くなることが明らかであることから、国税庁としても、 雑所得の範囲を明確化する必要性が大きくなったと思われます。
今回、国税庁が発表した通達の改正案は以下のようなものです。
所得税基本通達改正案(抜粋)
事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。
もともと、赤字の副業を事業所得として節税するというスキームは多くの場合かなり問題がありましたので、今回の改正は妥当だと思います。
今回の改正は、本年度の申告から適用される見込みです。
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