消費税インボイス制度〜売上1000万円以下の個人事業主への影響について

こんにちは、長野県須坂市の植木税務会計事務所  税理士の植木です。

インボイス制度の導入まであと1年1ヶ月を残すのみとなりました。

インボイス制度の導入で最も大きな影響を受けるのは、売上1000万円以下の小規模事業者=免税事業者、及びその免税事業者と取引を行う一部の課税事業者だと思われます。

今回は、大きな影響を受ける両者についてまとめてみました。

(わかりやすくするためものすごく簡素化していますがツッコミ無用です)

簡単におさらい  インボイス制度とは

消費税の基本的なしくみとしては、事業者が、売上に対してかかる消費税から仕入れにかかる消費税を控除して、差額を納付することになっています。

その際、事業者は、仕入れにかかった消費税の控除のための要件として、帳簿及び請求書の保存が必要になります。

インボイス制度が導入されると、要件の「請求書」が「適格請求書」となります。

適格請求書=インボイスであり、国税庁に登録された課税事業者のみが、このインボイスを発行できるようになります。

売上1000万円以下の免税事業者とその免税事業者の取引先への影響

事業者は、免税事業者からの仕入れについては、仕入れにかかった消費税を控除することができなくなるため、消費税の納付額が増加することになり、負担が増すことになります。

すると、その負担を回避するため、免税事業者に対して、課税事業者となってインボイスを発行するように要請したり、取引価格の見直しをせまるようになります。この場合、免税事業者の負担が増すことになります。

(具体例)

〜制度導入前〜

・事業者 A・・・売上110、仕入55(税込みで、仕入れはすべて事業者Bからのもの)

・免税事業者B・・・売上55、仕入11(税込みで、売上はすべてAに対するもの、仕入れは光熱費等)

→ Aは消費税の申告で、売上分10ー仕入分5=5を納税。利益は売上ー仕入ー消費税=50。

〜制度導入後〜

«特に取引価格内容に変更なし»

・ A・・・売上110、仕入55

・B・・・売上55、仕入11

→Aは消費税の申告で、売上分10−0=10を納税。利益は、売上ー仕入ー消費税=45に減少。

→Bは変わらず

«AはBに消費税分の取引価格の減額を要求»

・A・・・売上110、仕入50

・B・・・売上50、仕入11

→Aは消費税の申告で、売上分10ー仕入分0=10を納税。利益は50のまま。

→Bは消費税の申告はないが、利益が39と減少。

«BはAの求めに応じて消費税の適格課税事業者として登録»

・A・・・売上110、仕入55

・B・・・売上55、仕入11

→Aは制度導入前と変わらず。

→Bは消費税の申告で、売上分5ー仕入分1=4を納税。利益は売上ー仕入ー消費税=40と減少。

インボイス導入により、売上先も仕入先もなにがしかの影響を受ける可能性があります。

一般的には、上記の例で言えば、仕入先が売上先の求めに応じて、取引価格の見直しや課税事業者としての登録を求められることが多くなるのかなと思います。

しかしながら、

取引の優位性に基づく、一方的な価格の改定は認められない

国税庁の出しているインボイス制度への対応に関するQ&Aには以下の記載があります。

Q.現在、自分は課税事業者ですが、免税事業者からの仕入れについて、インボイス制度の実施に当たり、どのようなことに留意すればいいですか。

・・・(略)消費税の性質上、免税事業者も自らの仕入れに係る消費税を負担しており、その分は免税事業者の取引価格に織り込まれる必要があることにも、ご留意下さい。なお、免税事業者等の小規模事業者は、売上先の事業者と比して取引条件についての情報量や交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。このような状況下で取引条件を見直す場合、内容によっては独占禁止法又は下請法若しくは建設業法により問題となる可能性があります。

今回のインボイス制度導入に伴い、下請けとの取引内容を見直す場合には、一方的に決めるのではなく、下請けの立場を踏まえてよく話し合って決める必要があるということです。

独禁法の「優越的地位の濫用」に当たらないようにということですね。

まとめ

以上のように、今回のインボイス制度の導入は、免税事業者のみならず、免税事業者と取引を行う課税事業者にとっても影響が大きいところです。

もうすでに準備に取り掛かっているところが多いと思いますが、1年後に向けて、課税事業者も免税事業者も自身の立場を踏まえ、慎重な検討が必要になります。という話でした。

ところで、サラリーマンの副業としても人気のある太陽光発電事業について、インボイス制度はどのような影響をもたらすのでしょうか。この当たりについては、次回まとめてみたいと思います。

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