政府税制調査会で相続税や贈与税の見直しに向けた議論開始へ

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。
本日のニュースで「政府税制調査会で相続税や贈与税の見直しに向け議論開始」というものがありました。
高齢者が持つ資産を若い世代に移し、経済の活性化を図るためにどのような税制にすべきか本格的に議論するとのこと。
一般に、相続税に比べて税率が高い贈与税の税率を相続税と一本化すれば、高齢の親から子への生前の資産移転が進み、経済活性化につながるといわれていますね。
昨年末に政府与党が公表した税制改正大綱にも、本年度は「相続税と贈与税の一体化に向けて本格的な議論を開始する」との記載がありました。
このようなニュースだけ見ると、いま相続税の節税対策に取り組んでいる人やこれから取り組もうかと考えている人にとっては、「贈与税が引き下げられて生前贈与などの相続対策がしやすくなる良いニュース」と思いますよね。
実はそうでもないかもしれないのです。
生前贈与などの相続対策がしやすくなるのか?
税制改正大綱では、相続税と贈与税の一体化について、「資産移転の時期の選択に中立的な税制を目指して本格的な議論を開始する」としています。
難しい言い方をしていますが、資産移転の時期の選択に中立的ということは、同じ財産であれば、生前の贈与だろうが、亡くなった後の相続だろうが、税率だけではなく税負担全体が変わらないような税制ということです。
現在の贈与税の税率は相続税に比べて確かに高いのですが、毎年110万円までは非課税となっており、贈与した財産は3年以内に相続が発生しなければ、相続時に相続財産として考える必要はありません。
これは、資産移転の時期の選択に中立的とはいえませんので、今後、このような非課税部分が廃止され、3年以内の相続財産への戻し入れが5年とか10年に延長される可能性があります。
相続税と贈与税一体化に向けた議論は、資産移転の時期の選択をすることで税負担を抑える余地が小さくなる=相続税対策の余地が小さくなることも意味しています。
海外の例も参考に制度設計を考えるとしていますので、贈与財産の戻し入れ期間の長期化はかなり可能性が高いのではないでしょうか。(米国では贈与は無期限で相続財産に戻しますし、フランスやドイツも10年とかの長期間です)
税法改正の効果は原則的に遡及はしないので、今後駆け込みの贈与等が増える予感ですね。
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