法人税法最恐の規定?!使途秘匿金課税について国税OB税理士が解説

こんにちは、長野県須坂市の植木税理士事務所です。
「使途秘匿金」
普通の経理事務では出てこない用語ですよね。会計ソフトの勘定科目にも設定はないはず(あったらびっくり)
おそらく税務調査で指摘されない限りはほとんどの法人では使われない用語だと思います。
私の現職時代にも、調査による修正申告ではなく当初申告の段階でこの使途秘匿金課税を適用してきた法人は数社しか見たことありません。
この使途秘匿金課税の規定は法人税法の中でも最も恐ろしい規定で、調査において会社の経理処理が使途秘匿金と認定されて税務否認されるような場合、かなり大きなダメージをくらうことになります。
使途秘匿金とは
使途秘匿金については、法人税法本法ではなく、租税特別措置法の法人税法特例として規定されています。
そこでは、使途秘匿金の支出とは、「法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名及び住所並びにその事由を当該法人の帳簿書類に記載していないものをいう。」とされています。
金銭を支払った相手方のことを隠すということです。
そして使途秘匿金を支出した法人は、その支出が損金にならないというだけでなく、「使途秘匿金の支出の額の40%を本来の法人税額に加算しなければならない」との規定になっています。
つまり、法人税の実効税率が30%とすると、支出金額の実に7割を税金として納付しなければいけないというとんでもない規定なのです。調査で認定された場合には、そこに加算税とかもろもろ追加されて下手したら支出額の100%以上の追徴課税なんてことも。
実際に使途秘匿金課税の適用はあるの?
相手を秘匿するような支払自体は結構あります。
受注工作資金や工事を進めるための怪しい輩への謝礼金など、相手先を明かしてしまうと税務署がその相手先に行き、相手の収入もれとして課税されてしまいますので。
ただ、実際の調査において使途秘匿金課税の適用を受けるかというと、それはそんなに多くありません。
社長が自分で使ってしまったと主張すれば社長への賞与になります。税務側で使っていないと立証することは困難ですし、社長への賞与で重加算税となれば十分だと考えてそれ以上追及はしないでしょうし。
さいごに
この使途秘匿金課税の規定は、法人からなんらかの利益を得た者に課税が及ばないことを防ぐためのものなので、相手先に面倒をかけないお金を渡したいと思ったら、課税済みのお金つまり社長等のポケットマネーから出すしかありません。
これを会社の不正経理によって捻出しようとすると、法人税、消費税、源泉税、使途秘匿金課税、事業税、住民税、重加算税、延滞税、青色取消・・といった地獄のフルコンボが待ち受けていますので絶対にやめましょう。